校長室だより

【令和7年度】

10月14日 「交通安全意見発表会で思ったこと~交通安全週間によせて~」
 今年も秋の交通安全週間が終わりました。児童生徒が日々安全に登下校できていることに、感謝の気持ちを新たにする期間でもありました。
 秋分の日の9月23日(火) 、富山中央交通安全協会新庄地域支部発足60周年記念式典があり、その後行われた第5回「小・中・高・支援学校生による交通安全意見発表会」に、本校高等部3年生が発表者として参加しました。「道路を歩くことや交通安全に関して日頃思っていること」と題し、校内の5人の友だちから聞き取った内容を発表しました。視覚障害のある児童生徒が、交通安全で気をつけていること、日ごろ感じていることに加え、社会に対してこうなったらいいな、ということも伝えました。本文は以下のとおりです。

「道路を歩くことや交通安全に関して日頃思っていること」
 皆さんこんにちは。本校は、視覚障害教育と病弱教育を行っている学校です。
 これから本校の視覚障害児童生徒5名からの、道路を歩くことや交通安全に関して日頃思っていることを代表してお伝えします。よろしくお願いします。
 1人目は、小学部の視覚障害のある全盲児童からの意見です。
 私は、自立活動の時間に白杖を使って路面の情報を確かめながら学校の周りを歩く練習をしています。練習していて「怖い」と思うことは、自分のすぐ近くでスピードを出した車が通ったり、曲がったりすることです。交通安全で気を付けていることは、赤信号のときに横断歩道を渡らないように、注意して音を聞くことです。車の音をしっかり聞けば、進行方向が分かるので、車の音をよく聞いて歩きたいです。運転する人に気を付けてほしいことは、周りをよく見て運転してほしいということです。
 2人目も、小学部の視覚障害のある全盲児童からの意見です。
 私が交通安全で気を付けていることは、白杖を使って足元に何があるのかを調べながら、安全を確かめて歩くことです。また、車が通り過ぎる音や川の水が流れる音など、聞こえてくるいろいろな音も安全を確かめるのに役立ちます。道路を渡るときは、左右から車が来ていないか、音をよく聞くことで安全に渡ることができます。これからも白杖を使って道路を歩く練習をがんばります。
 3人目は、高等部で半年前から自主通学している視覚障害のある弱視生徒からの意見です。
 私は、家から最寄り駅まで母に車で送ってもらいます。そして駅に着いた時から私の自主通学が始まります。手に白杖を持ち、駅構内に入り地下の通路を進みます。この地下の通路を進む時、なぜかわくわくします。地下の通路を進んでしばらくすると、左側に階段が出てきて、この階段を上るとやっとホームに着きます。最初はこんなに長い道を毎週歩くのかと思っていましたが、今では、比較的楽しいです。ホームで電車を待ち、電車が来たら人の流れに沿って乗車します。電車は、人がとても多いです。たぶん大半が学生なので、たまに助けてくれたり、場所を空けてくれたりします。とてもありがたいです。電車を降りたら学校を目指して点字ブロックのある歩道を歩きます。学校までの道は、虫が飛んできたり、自転車がすぐ横をかけぬけていったり、ものすごい異臭がしたりといろいろあります。けがもなく、なんとか自分で登校できるようになったので、とてもうれしいです。自主通学は大変ですが、これからも安全に気を付けて登校を続けたいと思います。
 4人目は、高等部の自主通学を目指して歩行練習をしている視覚障害のある弱視生徒からの意見です。
 「交通事故」はなくならないものですが、みんなで気を付ければ少なくなるものだと思います。私は、自立活動の時間に道路を安全に歩く練習をしています。白杖をシンボルとして持ち、いろいろなものを見て歩いています。学校周辺道路から歩行練習を始め、今は越中荏原駅までの道路を練習しています。実際に県道を歩いてみると、車が多く、歩道と車道の距離も近いため、とても怖く、普段よりもゆっくり歩いて安全を確保できるようにしています。また、私は見えにくさに加えて、聞こえにくさもあるので、音がどこから聞こえてくるのか分かりません。そのため、車が近付く音が分からず何度もぶつかりそうになったことがあるので、交差点や曲がり角は念入りに見ることを意識しています。
 運転する方には、信号無視やスピード違反をなくし、歩行者が安全に道路を歩けるようお願いしたいです。また、目が不自由な方、車椅子の方や高齢の方など困っている人を助けてほしいです。もっといろいろな場所に出掛けたいという夢をかなえるために、これからも歩行練習をがんばっていきます。
 最後は、中途で視覚障害となり専攻科保健理療科で、あん摩マッサージ指圧師の資格取得を目指している弱視生徒からの意見です。
 交通安全について思うことが6つあります。
・高齢者の交通事故が多い。
・自転車で車道の真ん中を走ったり、広めの道路を斜め横断したりするな
ど、交通ルールの認識が薄い方が多い。
・点字ブロックの破損やすり減っているところが多く、補修してほしい。
・歩道の狭いところや傾斜があるところの整備をしてほしい。
・新しく整備された歩道に設置された防護柵の色が暗く反射材もないので、暗くなると柵があることに気付きにくいので困っている。
・積雪時の歩道の除雪を早めに取り掛かってほしい。
などです。いろいろお願いもしましたが、よろしくお願いします。
 終わりに、私たちの学校には、視覚に障害のある児童生徒が学んでいます。道路を歩くためには、かなりの努力と練習が必要です。しかし、本人の努力だけでは安全の確保は難しく、周囲の人や社会の理解も必要だと思っています。全ての人が安全に安心して歩くことができる社会になってほしいです。

 本校の意見発表に対して、警察署の方から「とても考えさせられた。通学路にはいろいろな危険が潜んでいる。その中で、視覚障害のある皆さんは車の近づいてくる音、信号の音などを聞き分けて歩いておられるということが分かった。道路の整備が十分でない箇所もあり、これは警察が対応を考えなくてはならないこと。聞かせてくださってありがとう。」と講評をいただきました。
 このような機会をとおして、当事者の声を直接会場の皆さんに届けることで、一人でも多くの方が「自分ごと」として考えてくださるとよいと思いました。なぜならば、それは視覚障害のある人だけではなく、誰にとっても安心安全な地域社会に変わっていくはじまりになるからだと思うのです。


9月11日 「強くて、優しくて、かっこいい~パラリンピック柔道メダリスト交流会~」
 9月3日(水) 学校に日本視覚障害者柔道日本代表チームの皆さんが来校されました。合宿のために来県されましたが、その前に本校の子供たちとの交流を是非、と熱いお気持ちを寄せてくださり、この交流会が実現しました。男子監督の谷井 大輝さん、女子コーチの田知本 遥さんは富山県出身の方です。
 40分間の短い時間でしたが、トークタイム、柔道体験、メダルの観察・触察と盛りだくさんな内容でした。
 トークタイムでは、「大きくなるための食べ物は何ですか。」「柔道を始めたきっかけは何ですか。」「パラリンピックに参加されてどうでしたか。今後の目標や夢はありますか。」「いつでも頑張れるとは限らない。モチベーションが下がらないようにしていることがあれば教えてください。」などたくさんの質問に、一つひとつ笑顔で丁寧に答えてくださいました。それを聞いて、「安心した、今のままで大丈夫だ。」とか、「自分も同じことをしているな。」と思った子供たちもいたことでしょう。そして、周囲からの応援や声援が励みになって頑張ることができた、自分が頑張ることでみんなを喜ばせることができると分かった、という半谷選手のお話からは、期待を受けて、それに応えようと頑張ることで、技がますます磨かれ、心もますます大きく深く成長するんだな、ということが分かりました。
 柔道体験では、技のかけ方を教わった子供たちが大外刈りで選手を倒しました。大きな選手がごろんと倒れる音と様子にみんな大歓声でした。代表の子供たちは、びっくりとうれしいが入り交じったいい表情をしていました。
 メダルの観察・触察では、実際に手のひらにのせて重さを感じたり、刻印された点字を確認したりしました。
 最後に、子供たちから選手の皆さんに、小学部の児童が作った手作りメダルをプレゼントしました。選手の皆さんはとても喜んでくださいました。
 夢に向かって努力を重ねておられる選手の皆さんから、たくさんパワーをいただきました。心に残るすばらしい体験を本当にありがとうございました。「強くて、優しくて、かっこいい」日本視覚障害者柔道日本代表チームの皆さん、今後のご活躍を子供たちと一緒に応援しています。

選手に大外刈りをかける児童 実物の銀メダルに触れて形や点字を確かめる児童


7月11日 「広がる世界~中部地区盲学校 お話と弁論の会~」
 7月4日(金)「中部地区盲学校お話と弁論の会」が名古屋盲学校で開催されました。中部地区の各校から弁士が集まり、制限時間7分間の中で、聴衆に自分の考えや思いを伝え、順位を競うものです。
 本校からは、今年度高等部3学年生徒が出場しました。タイトルは「広がる世界」。自分自身のこれまでのこと、本校を選んで高等部から入学したこと、今の気持ち、将来のことを原稿にし、暗記し、感情をこめて伝えられるよう練習を重ね、当日を迎えました。当日は緊張しながらも、大役を果たし、他校の生徒たちともたくさん交流し、学びの多い一日になったようでした。
 弁論の一部を紹介します。『なんと言っても、視覚総合支援学校では見えないからだめではなく、見えないならどうすればいいかを先生と一緒に考えることができます。それがうれしいです。(略)工夫すればできることが増えると考えます。』『今は、わくわくすることがたくさんあります。たいへんな部分も多いですが、諦めないで成長したいです。私は絵が好きなので自由に絵を描き続けたいと思います。障害があるからできない、ではなく、頑張って人生のハードルを乗り越え、友だちや家族や、いろいろな人と協力し支え合って生きていきたいです。(略)楽しく一生懸命生きていきます。』
 生徒の言葉から、学んだことがふたつあります。「こうなりたい」と願う気持ちは、周りを巻き込み、実現させていくことができること、本人の心の中に「よくやった自分」が貯まっていくこと、そうして、次の「こうなりたい」につながっていくこと、もうひとつは「自分はひとりではない、支えてくれる人がいる」ということです。改めて、この大切さに気づかされました。
 これまでたくさんの経験をし、いろいろな思いをしたこと全てが、世界を広げ、生徒自身を大きく成長させているのだと思います。そして、「今は、わくわくすることがたくさんあります。」と言えることも、とてもすばらしいです。今の自分が充実しているからこその言葉だと感じます。たくさんのことを私たちに教えてくれました。本当にありがとう。


6月24日 給食ラジオ
 「皆さんこんにちは。給食ラジオの時間です。」から始まる校内放送が、給食の時間に流れます。
 栄養教諭が給食の献立を伝え、食に関するクイズや、食材に関する知ってためになる豆知識が主な内容になっています。時々、小学部児童が献立を伝えて給食や食材について感想を話したり、児童会や生徒会の児童生徒役員がお知らせを伝えたりすることもあります。また、日々の学習で取り組んだことの紹介や発表も給食ラジオで伝えられることがあります。
 先日の給食ラジオは、さわやか運動の標語募集で見事校内一位に輝いた児童の標語の発表と、音楽の学習で「翼をください」の器楽合奏をした高等部生徒の演奏の二本立ての内容でした。
 給食ラジオは、自分の頑張りを知ってもらう、友達の頑張っている様子を新たに知る点でもとても大切な役割を果たしています。コロナ禍後、会話を楽しみながら給食をいただいていた以前の光景に戻るにはまだ時間が掛かりそうです。でも、おいしい給食におなかがいっぱいになることと併せ、給食ラジオから流れてきた内容に心がほかほかした気持ちでいっぱいになるうれしい時間になっています。


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